おぶせの里だより

医療関係者が自身の経験談や体験談、趣味に関する小話をおぶせの里からお届けします。

こころの豊かさを求め、自分探しの旅(母校での講演より)<7-2>(last)

  マザー・テレサは、ボランティアをしている人にこうアドバイスしています。「あなた方は、人のために何かをしてあげていると思わないで下さい。あなた方のほうがどんなにしてもらっているか、その恵みに気づいてほしい。」。

 興譲の心をもって生きるというのは、マザー・テレサのいう恵みに気づき、心の豊かさを実感することに繋がっていくのではないでしょうか。「興譲」とは、「分かち合い、共感する心を興すこと」であり、この病んでいる二十一世紀の、この世界への大きなメッセージだと思うのです。現在と未来に対する絶望感、閉塞感、それが今この時代全体を覆っています。堅固なものだと思っていた職場、社会的地位、家族、財産、これまで人生をかけてきた期待が、ことごとく裏切られるという深い喪失感が、特に中高年層に蔓延しています。また若い世代からは、不透明な時代にあって、息苦しさに喘ぎながら、崩壊する価値観の中で自分の位置を見失い、これからどう生きたら良いのか分からないという、悲痛な叫び声が聞こえてきます。

 劣等感に苛まれている方、自分の生きる道がわからず自暴自棄になっている方、未来に夢や希望を持てなくなっている方、この興譲の精神を胸に、第四の窓に隠された「自分」、未知の「自分」を探してみてください。自分探しというのは、自分一人ではできません。人と人との出会い、またこの地球上にある様々なことを学ぶことから可能になってくるのです。あなたは自分の未来を拓くために、苦闘しなければなりません。自分探しの旅というのは、狭い門から入るしかありません。自分だけに備えられた門があるのです。一方で、楽しくて、好ましくて、楽で広い道があります。多くの人がそちらを行っているとき、一人自分だけが狭い道を行くことは、とても大きな勇気と知恵が要ります。恥をかくかもしれません。でもそこには「自分」という発見があります。新しい道が開けてくるのです。

 ルネッサンスの巨匠ミケランジェロは、彼の彫刻に感嘆する人々に向かって、「自分はただ大理石の中に閉じ込められていた天使を掘り出しただけだ。」と言ったといわれています。人生の旅路の途中でふるわれるノミの鋭さ、すなわち挫折、出会い・・・こういったものが、堅く冷たい石に閉じ込められた本当の自分を掘り出してくれるのです。わたしも他人も知らなかった第四の「自分」に出会う道が開かれるのです。自分探しの旅は一生続きます。人生、山あり谷ありであり、挫折することもあるでしょう。挫折を恐れないで、自分探しの旅に出掛けましょう。あなたの人生は、あなた自身のものなのですから。

 恥
恥をかくことが恥ずかしい事ではない
恥を嫌って、何もしないことが恥なのだ
失敗する事が恥なのではない
失敗を恐れて、学ばないことが恥なのだ
ビリであることが恥ではない
挑戦しないことが恥なのだ。