おぶせの里だより

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新型コロナウィルス感染症 最新の知識と対応の指針 ②

第 2 章 新型コロナウィルス感染症の最新の知識
:令和 2 年 3 月 18 日 医師対象の緊急 Web セミナーの要約


1、新型コロナウィルス感染症の最新の知識

☆世界の感染者:1 月 28 日 4500 名、3 月 1 日 8 万人、3 月 11 日 16 万人、
4 月 5 日 120 万人超


☆全死亡率:平均 3.9%:中国 4%、

                   日本:4月 6 日現在 3191 人、死亡 70 人、死亡率 2.2%

 

☆日本では急激な増加傾向にあり、まだ減少傾向にはなっていない。(添付資料グラフ参照)


☆新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)は,、SARS-COV(サーズ:重症急性呼吸
器症候群コロナウイルス)とは遺伝子が 75~80%一致、MERS(マーズ:中東呼吸器
症候群)コロナウイルスとは 50%が一致し、これらのウィルスと近い関係にある。


☆新型コロナウィルスはコウモリ由来 COVID と 85~88%が同一。


SARS サーズや MERS マーズ のウィルスは下気道:気管・気管支・肺に感染→下気道
感染の患者を重点的に隔離する事で防御可能だった。
しかし、新型コロナウィルスは上気道:鼻腔・咽頭と下気道の両方に感染、かつ無症状の事も多い → 感染力が高く、隔離されずに他を感染させることが多い


SARS と同じように変異しやすい → 薬が効いても変異によって効きにくくなることが
あり得る。これは MERS が変異しなかったのとは対照的である。


☆新型コロナウィルスは無症状でも感染する。
平均値:患者 1 人は2~3 人に感染させる。
潜伏期間は 4~7 日
死亡率は 4%(SARS は 15%、MERS は 30%)」

 

☆疫学:武漢海鮮市場以前に発症者があった。
中国湖北省でのデータ:感染者の約9割は無症状・軽症者、約1割が重症化


☆死亡率は、60~69 歳 が 4%、70~79 歳が 8%、80 歳以上は 15%。基礎疾患があ
ると跳ね上がると言われているがその程度は未確認。


☆新型コロナウィルス感染症の症状
発熱がほぼ 100%、咳が 80%、筋肉痛・だるさが 45%、つまり風邪と変わらず鑑別は困
難である。
 症例:発熱(7 日間)→(8 日目)呼吸困難→(9 日目)ARDS(acute respiratory distress
syndrome:動脈血中の酸素分圧が 60mmHg 未満になる呼吸不全のうち、比較
的短い期間で急速に起こってきた場合)→(10 日目)集中治療室


☆新型コロナウィルスの検出:感染者ではどこの試料で検出されるか
気管支肺胞洗浄液(Bronchoalveolar Lavage Fluid:BALF 、気管支鏡と呼ばれる細い肺
カメラで気管支内に 20~100ml 程度の生理食塩水を注入し、回収した液 )では 93%,、
痰が 72%、便が 30%、全身のどこにでも存在する分子を介して感染しているが、肺での
発現が多い。


☆治療とワクチン
steroid:死亡率を下げる。
lopinavir/ridonavir:SARS では有効→新型コロナウィルスでも有用だろう。
rendisvir/fonavir/chloroquine:実験では増殖抑制するが臨床データはまだ無し
ciclesonode:FDA 承認 MERS 治療薬→新型コロナウィルスにも有効ではないか。
ワクチン
3 月 15 日 16 日 mRNA1273 phase1 開始、45 人に使用

 

☆経過と予後
新型コロナウィルス無症候性病原体保有者の PCR 連続 2 回陰性までの経過
 90%が 6 日以上を要する
 20%が 1 回は陰性化、しかし後に再陽性化
 12%は 15 日以上を要した


☆新型コロナウィルス患者への対応

インフルエンザに準じた対応。陽性なら入院、特に高齢者で基礎疾患(高血圧、糖尿病その他)を持つ人は集中的な治療を受ける。
症状は急激に進行するので早期対応が必要。

 

2、新型コロナウィルス感染予防・対策
  日常生活での注意点・予防について

Q1、環境中でどの程度、感受性を保つか
物質表面では数日間は感染性を維持→環境消毒の重要性
☆ウィルスが付着したものからの接触感染を防ぐため、手指が触れることの多いものに対しての除菌も重要


金属表面 ≦5 日
プラスティック表面 ≦9 日
木材 ≦4 日
紙 ≦5 日
ラテックスグローブ ≦8 時間
ディスポーザブルガウン ≦2 日


汚染場所
ドアノブ・照明等のスイッチ・テーブル・椅子・電話機・水道の蛇口
パソコンのキーボード及びマウス・コピー機等のボタン・ロッカー
床・ベッド・ベッド枠・ベッド柵・窓と窓枠・排気口・洗面所・洗面所シンク内側
トイレのドアノブ・便器のフタ・洗水レバー・トイレ便器の中など


密閉空間は危険:空中で数時間に亘り感染性を保っている。
☆換気と環境消毒が重要、しかし、通常の清掃で大体消失する ← すべて消毒する事にこだわる必要は無さそう。


Q2、消毒手
80%エチルアルコール(エチルアルコール)に 30 秒から 10 分間
イソプロピルアルコール 50~100%に 15~30 秒
イソジン 15~3 秒
次亜塩素酸 Na 0.21%に 30 秒以上で死滅:低濃度では無効、皮膚使用は不可⇦次亜塩
素酸水の方が効果が高く、食品添加物にも許可されているともいわれていますが、かなり高価です。


☆新型コロナウィルス感染症の予防には、石けん等による手洗いが有効です

手指消毒にはエチルアルコールイソジンを使用
環境はエチルアルコールイソプロピルアルコール(イソプロパノール)次亜塩素酸
0.21%


アルコールによる除菌の他、入手しにくい場合は次亜塩素酸ナトリウムが有効です。
但し、
薄い次亜塩素酸 Na、クロルへキシジン、塩化ベンザルコニウム(逆性石けんの
一つ)は効果なし


Q3 新型コロナウィルスはどのタイミングで伝播するか?
1飛沫または飛沫からゾルが蒸発した後の飛沫核で伝播する
N95 マスクを、くしゃみのような大量の飛沫が放出される場合には使用しなければならない。
2接触感染:手に付着 → 口・鼻・眼を触り感染 ← これらの粘膜を通じて感染

 

Q4、どの人が陽性者か分からない
1、医師・患者のサージカルマスク着用
2、手指消毒
1診療前後の手指消毒
2自分のマスクに触れる前後も手指消毒
3環境消毒:診療器具使用前後、患者の接触箇所・椅子等も環境消毒、就業前後のデスク周辺・キーボード等(マウスなど)の環境消毒

 

Q5、検体スワブ採取に際して
診察の前に、患者が触る可能性の有る携帯電話・ポーチ・ポシェットなどは入室前に誰かに預かってもらう。
入室前に消毒、ガウン着用、マスク・手袋・キャップ・保護メガネ装着
患者の正面には立たない。最低でも真横から採取する。
患者の体に触れたものは清潔なビニール袋に入れて廃棄する。


Q6、スタッフの個人防衛が大事
ひとりひとりのエチルアルコール消毒、
脱着前後の手指消毒、汚染区域と清潔区域の峻別、

手の消毒が最も重要:ヘアキャップを外して消毒、マスクは下のヒモ後ろをもって、外した後で消毒、手袋を脱いだ後も消毒、脱いだものはハザードボックスへ廃棄


Q7、診療所の感染対策マニュアル手順書
医療機関での手順に応じて連続写真を撮り、並べて消毒の手順とタイミングを掲示するのが効果的。


Q8、医師がいない施設の対策
新型コロナウィルスは発熱が必発(ほぼ 100%)、咳 60%、ご飯を受け付けない 60%、
だるさ 30%、ハアハアしている(呼吸回数頻数)30%、咽頭痛 10%
特に、ご飯を受け付けない・ハアハアしている時には緊急事態であることが多い。

 

第 3 章  目で見る新型コロナウィルス感染の変化
   令和 2 年 3 月 29 日現在
☆3 月 29 日以降にも本データに含まれていない感染が新たに発生しています。


1、自治体別感染者数

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