おぶせの里だより

医療関係者が自身の経験談や体験談、趣味に関する小話をおぶせの里からお届けします。

たとえコロナ禍でも、障害を持ったお子さんへの医療福祉施設の理念

 現在の日本はコロナ禍に見舞われ、人々の生活がひどく脅かされています。
 過去にも、長野県では千曲川氾濫、白馬大地震御嶽山浅間山噴火などの災害によって、多くの被害がもたらされました。国や県は災害復興に予算を取られ、真っ先に一番弱い子供たちの福祉予算が削られてしまいがちです。そのような中でも我々は障害を持ったお子様を守っていかなければなりません。

~医療と福祉はどのように関わっていくのか~

 WHOは保険を通して、人々が健康に暮らせることを提唱しています。その為には、ケアを受ける人々が身体的、精神的(主に医療的ケア)、そして社会的(主に福祉サービス)にすべて満足感を得られるようにしなければなりません。
 医療的ケアは物理的な身体的障害に対し、資格を持った者(医師、看護師、理学療法士)が、科学的な思考下でアプローチし治療に当たる行為です。
 福祉は、社会福祉士介護福祉士等の専門性の高い知識を必要とすることもありますが、資格という制限がなくとも、施設利用者が実生活で再び社会的に受け入れられ、幸福な社会的福祉を享受できるように、相談業務、介護やボランティア等を通して携われます。
 いくら良い医療を施しても、その人が社会的に受け入れられなければ、十分な満足感は得られず、その人に対する”保険”は未完成です。福祉が適切に行われることで最終的に完成するのです。

~障害を持ったお子さんの将来にわたる命と QOL(人生の質) にどう向き合うか~

 重症心身障害者の平均寿命は、一般的に多くの合併症を抱えている為に短いと言われています。大体20歳ころより、合併症症状が徐々に顕在化しやすいと思われています。それに伴い、身体的、精神的、社会的に次第に尻すぼみになりがちです。
 短い寿命の方が多い中、人として充実した人生(身体的、精神的、社会的に)を送れるようにサポートするのが、医療福祉施設の使命です。
 しかしながら、人生とは残酷なものです。
 最初のうちは、親御さんはいろいろな希望を持たれることもあるでしょう。しかし、障害を持ったお子さんと人生を共に苦楽を共有しながら生きていく中で、気持ちのゆらぎは必ず生じます。その人生のプロセスを適切にサポートするのが福祉の重要な役目です。たとえその親子がどのような人生のプロセスをたどろうとも、その状況に応じた身体的、精神的、社会的に最大限健康でいられるサービスを提供しなければなりません。


~経営基盤について~

 そうはいっても、上記の理念を実現するためには、経営基盤が健在である必要があります。資金があってこそ理念は実現できるのであって、無ければ机上の空論に終わってしまいます。
 当施設の経営基盤は、本体部分の入所児童数の確保です。
 short stay のお子さんの受け入れは、人工呼吸器装着などより重症度が高くなっていますが、高度なトレーニングを積んだ看護師、生活介護スタッフ、リハビリテーションスタッフが受け入れています。
 医師側も急変時、最大限のサポートをお願いしています。急変時は人海戦術になるので、当直医だけに任せず、連絡のつく医師にも駆けつけてもらいます。
 一般小児、大人の外来診療についても、地域住民の方に良質な医療サービスの提供を目指しています。

~最後に~

 当医療福祉施設は、この地域でなくてはならないものとして、その存在価値を高めていきたいと思っております。お互いに持ちつ持たれつの信頼関係が生まれれば、当施設が困った時、(たとえば令和1年の千曲川氾濫時のように)地域の方がきっと手を差し伸べてくださいます。特に障害を持ったお子さんのご両親には、この施設だったら安心して預けられると思っていただけるよう、常に精進して参りたいと思っております。