おぶせの里だより

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新型コロナウィルス感染症 最新の知識と対応の指針 ④ <消毒について*(補遺)>

消毒

1)手指消毒:不特定多数が触れる可能性の有る場所に触れた場合には、エチルアルコールなどによる手指消毒を行って下さい。
☆自宅を出た後、どの様な物体に触れたのか、記憶にあるなしに関わらず、建物・室内空間に入った時、エチルアルコールなどの消毒液が出入り口に設置してある時には必ず、入った時にも出る時にも手指や手のひらを消毒して下さい。
☆ショッピングセンター、スーパー、他の施設でも手指消毒用エチルアルコールが設置されている時には積極的に使用して下さい。
エタノールが売り場の棚から消えています。その為、塩素系消毒剤で手指を消毒しているという話しを聞くことがあります。しかし、塩素系漂白剤は肌荒れを引き起こします。
☆薄めたものでも、塩素系漂白剤が皮膚に付いたときはすぐに水道水で洗い流し、石鹸を使って“ぬるぬる”を感じなくなるまで流してください。
☆塩素系消毒薬を使う時や、誰が触ったか分からないものを取り扱う時には、ゴム手袋やナイロン袋*ごしに触って下さい。
*薄いナイロン袋は手袋の代わりになります。袋を手にかぶせて取り扱って下さい。触り終わったらくるくると裏返しながら手から外し、袋の口近くを縛ってそのまま捨ててください。但し、スーパーの荷詰め台にある薄いナイロン袋の独り占めはご法度・マナー違反です。
☆環境物体に触れる場合、下記2)に列挙された環境・物体に触れる、若しくは触れた場合には作業前後の手指消毒を忘れないで下さい。

2)環境消毒の重要性
新型コロナウイルスは物体表面で数日間は感染性を持っています。環境消毒が重要です。
☆物体表面でのウイルス生存期間
金属表面 ≦5 日(最長 5 日間)
プラスティック表面 ≦9 日
木材 ≦4 日
紙 ≦5 日
ラテックスグローブ ≦8 時間
ディスポーザブルガウン ≦2 日

3)どこを、何を消毒するか?
汚染場所は多岐にわたっています。手や物に一度、付着した後は、生活環境のあらゆる物体の表面に付着が拡がります。しかも、物に付着した新型コロナウイルスは、上に揚げた「☆物体表面でのウイルス生存期間」にあるように長期間、感染性を保っています。これらは通常の清掃で大体消失しますが、直接触れるものは、きちんと消毒して下さい。

☆感染者の過ごした空間には、“ウイルスが、蜂蜜のようにベッタリ付いている”と思って下さい。
新型コロナウイルスを可視化出来る蛍光色素があります。患者さんが生活していた部屋にその色素を撒いてから、部屋を暗くして撮った写真をで見ました。その部屋では、生活空間で手が触れたものすべてにべったりとウイルスが付着してきらきら光って見えました。
ウイルスは、床はもちろん、天井まで飛んで付いていました。
“蜂蜜のように”という表現はその時に思い浮かびました。まさに蜂蜜が付いた手であちこち触り、物に付き、その物が置かれたところにも蜂蜜が付いた、といった様子でした。

☆消毒する場所・もの
ロッカー、床、椅子、ベッド、ベッド枠、窓、照明スイッチ、排気口、ベッド柵、洗面所、洗面所シンク内側、
エレベーターのボタン、カウンター、電話・Fax 機器、トイレのドアノブ、トイレ壁、
床・天井、便器の中など

4)環境消毒に使用する溶液
次亜塩素酸ナトリウム:汚染可能性の有る箇所には塩素系消毒剤を 0.21%に希釈したものを使用します。
次亜塩素酸水:エタノールの替わりに、次亜塩素酸水を使う事も出来ます。次亜塩素酸水は、次亜塩素酸ナトリウムと同様に、安全で食品添加物にも許可されています。しかし市販品はかなり高価です(現時点では、エタノールが品薄で高価になっていますので、差はほとんどなくなっています)。自宅で合成する機器が発売されていますが、有効濃度が次亜塩素酸ナトリウム 0.21%の効果以上の力価になっているかどうかの確認が必要です。
とくに、効果は PH の値によって大きく変化し、微弱酸性状態で高い効果が現れます。その一方、化学的に不安定なため保管方法や使用期限に注意することが不可欠です。
☆次亜塩素酸水はインフルエンザウイルスなどではエンベロープ(膜)構造を破壊することで不活化させます。新型コロナウイルスもインフルエンザウイルスと同じ構造(エンベロープ構造)を持つウイルスですから次亜塩素酸水は新型コロナウイルスにも同様の効果を示す筈です。むしろ次亜塩素酸ナトリウムよりもその効果が大きいとされています。

(補遺)
以下の条件を満たす場合に新型コロナウイルス消毒に有効であることが確認されました。
a、次亜塩素酸水(電解型*1)は有効塩素濃度 35ppm 以上、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム(非電解型*2)は有効塩素濃度 100ppm 以上
b、次亜塩素酸水の利用に当たっては、汚れ(有機物:手垢、油脂等)をあらかじめ除去すること、対象物に対して十分な量を使用する次の注意が必要であることが必要。
(*1電解型次亜塩素酸水:食塩水や塩酸を電気分解して生成した次亜塩素酸水。
*2非電解型次亜塩素酸水:電気分解以外の方法で製造された次亜塩素酸を主成分とする酸性の溶液。次亜塩素酸ナトリウムに酸を混合するなどの製法、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムなどの粉末を水に溶かすことでつくる次亜塩素酸水など。)
界面活性剤(洗剤):家庭や職場でのアルコール以外の消毒方法として次の 9 種類の界面活性剤が有効と判断されました。
・直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(0.1%以上)
・アルキルグリコシド(0.1%以上)
・アルキルアミンオキシド(0.05%以上)
・塩化ベンザルコニウム(0.05%以上)
・塩化ベンゼトニウム(0.05%以上)
・塩化ジアルキルジメチルアンモニウム(0.01%以上)
・ポリオキシエチレンアルキルエーテル(0.2%以上)
・純石けん分(脂肪酸カリウム(0.24%以上)
・純石けん分(脂肪酸ナトリウム(0.22%以上)
これらを含む市販の洗剤については NITE ホームページで具体的な情報が得られます。

☆ 「 効 果 が 確 認 さ れ た 界 面 活 性 剤 を 含 む 有 効 界 面 活 性 剤 を 含 む 洗 剤 リ ス ト 」
https://www.nite.go.jp/information/osirasedetergentlist.html

☆「家庭用洗剤による消毒動画」

https://www.youtube.com/watch?v=38HY_4-5sCU&feature=youtu.be


市販の塩素系漂白剤液の原液から消毒用液(0.21%*)をつくる方法

次亜塩素酸ナトリウムは、一般的に「塩素系漂白剤」(塩素濃度約 5%、または 10~12%)として販売されています。
☆薄めた消毒液は時間が経つにつれて効果がなくなりますので、使うときに原液を希釈して必要な量だけ作り、作り置きをしないでください。
次亜塩素酸ナトリウムは日光によって分解され殺菌力が低下します。原液は直射日光の当たるところや、高温の場所には置かないでください。
☆☆薄めた塩素系漂白剤を入れたペットボトルには、消毒液であることをはっきりと表示してください。
☆ペットボトルのキャップ 1 杯の容積は、約 5ml とされています。注射器で液を入れながら測定したところ、キャップの縁よりわずかに下で 5ml となるようです。
☆漂白剤キャップは約 20~25ml で、ペットボトルキャップの約 4 倍ありますから間違わないように注意して下さい。
☆注意:必要な分だけ作って使用し、作り置きは避けて下さい。
☆原液は刺激性が大きいため、溢れさせるぐらいまで入れながらはかる事は避けてください。大体の目安でも仕方ありません。
☆0.1%への希釈法しか載っていない場合には、原液使用量を 2 倍にしてください。

◎ミルトン(他製品ではミルクポン、ピュリファン)
原液濃度は 1%です。
0.21%液調整手順:ミルトン 1%を 4.76 倍に薄める。
①原液 21ml(ペットボトルキャップで約 4 杯)を空の容器に移す。
②水を 100ml のラインまで加える。

◎原液 5%の場合(ハイター、ブリーチ、ジノック)
①500ml ペットボトル 1 本からペットボトルキャップ約 4 杯(21ml)の水を捨てる。
②塩素系漂白剤原液をペットボトルに、キャップ約 4 杯(21ml)入れる。

◎原液 6%の場合(キッチンハイター)
①500ml ペットボトル 1 本からペットボトルキャップ 3 杯と 3/4 杯(17.5ml)の水を捨てる。
②塩素系漂白剤原液をペットボトルに、キャップ 3 杯と 3/4 杯(17.5ml)入れる。

◎原液が 10%の場合(ピューラックス 10、ハイポライト 10)
①500ml のペットボトル 1 本からペットボトルキャップ 2 杯(10.5ml)の水を捨てる
②塩素系漂白剤原液(次亜塩素酸ナトリウム)をペットボトルにペットボトルキャップ 2
杯強(10.5ml)入れる。

☆上記以外の製品の時には、ボトルに記載の濃度・インターネット製品情報もしくは直の会社への問合せをもとに、用途に応じ、薄めて使用してください。

 

薄めた塩素系消毒剤の使用

注意(追加):
☆商品に記載してある使用方法をよく確認し、特に次のことに注意して使用してください。
☆使用するときは、換気を十分に行ってください。
☆拭き取りに使用したペーパータオルは他のものに触れないようにして捨てて下さい。
☆酸性の強い洗剤と混ぜると有毒ガスが発生しますので注意してください。
次亜塩素酸ナトリウムには、腐食作用・漂白作用(変色や色落ち)があります。使用後はしっかりと水で洗い流すか水拭きをしてください。
☆消毒液が皮膚や衣服についた場合は、直ちに水で洗い流してください。
☆皮膚への刺激が強く肌荒れを引き起こします。使用時には皮膚へ直接触れないよう、必ずビニール等の手袋を使用してください。また手指消毒には使用しないでください。
(再掲)薄めたものでも、塩素系漂白剤が、手やその他の皮膚に付いたときはすぐに水道水で洗い流し、石鹸を使って“ぬるぬる”を感じなくなるまで流してください。
☆金属部分に使用する場合は、錆びたり変色したりすることがあるため注意が必要です。使用後 10 分程度経ったら水拭きをしてください。
☆スプレーボトルでの薬液の噴霧はウイルス飛散の可能性があるため好ましくありません。
購入物品の表面殺菌用の紙に薬液を浸み込ませるため吹き付けるのは構いません。
☆薄めた塩素系消毒剤の使用法
①利き手に、紙(ペーパータオル、ティシュー等)を持ち、希釈済みの塩素系消毒剤を十分に浸み込ませ、対象となる環境・物体を拭く。(拭く場所が濡れている場合には水分を拭き取った後に行ってください。)
使用後の紙は捨てる。
②金属類は錆を作る可能性が大きいので、後で渇いた紙で拭きとっておく。
③買い物でも汚染されている可能性の有るものは包装のまま同様に拭いて消毒する。
④塩素系消毒薬がまだ乾いていないものは、段ボールの箱に入れ、箱ごと通気の良い場所に放置して表面の乾燥を待つ。
乾燥後は素手で触れても特に問題は無いが、その手で眼をこすったりはしない。

 

ひとりひとりの綿密な行動が、自分の健康を守り、
それぞれの役割を全うする事をもたらしてくれます。