新型コロナウイルス感染症 最新の知識と対応の指針 ③ (2/2)
2、小児の新型コロナウイルス感染では半数が症状無し
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では、高齢者では重症化と死亡リスクが高いが、小児では不明確な部分も少なくない。中国・浙江省での小児感染例では、男児23例、女児13例の合計36例(平均年齢は8.3歳)についての後ろ向きコホート研究(結果から振り返ってみると)では、小児例での症状程度は軽度および中等症のみ、平均入院期間は14日で、最終的に全例とも回復していた。重症度では、軽症:無症状か上気道症状のみが17例、中等症:軽度の肺炎が認められた患者が19例だった。一般に成人では、無症候性感染比率が5%未満とされているが、今回対象の小児集団では28%だった。また、小児例ではCOVID-19に典型的な症状の発現率も低い結果となっていた。成人の86%で発熱、62%で乾性咳が認められるのに対して、小児集団では、発熱が全症例36%、軽症例24%、中等症例47%、乾性咳の発現率は全症例の19%、軽症例の18%、中等症例21%とかなり低かった。
(この違いの医学的な理由は不明です。
☆症状はヒト側の条件と、病原例の複数の要因の相互作用によって発現します。双方の諸条件の組合せ・順列は無数にあります。強靭な生理的反応力を持つ人は強い刺激にも耐えられるでしょうが、生理的反応が強すぎて我が身を苛むこともあります。
*子供の発症が少ないようです。基本的に新生児の免疫能力は未発達です。そのため新生児は、多くの栄養成分や成長因子に加えて、分泌型抗体である lgA や強力な抗菌作用をもつラクトフェリンなどが含まれている初乳を飲むことで病原体から護られます。その後、子どもはさまざまな感染症にかかることで免疫力をつけながら成長していきます。
新型コロナウイルス感染機構と症状発現には、免疫機能の関与が考えられてます。病原体に対する第一の生理反応が免疫反応です。大人の方が、新型コロナウイルス感染に対して強い症状を示す事については、より発達した免疫反応が自分自身を攻撃するメカニズムも関係しているのではないかと言われています。
☆いずれにしても、単一メカニズムで説明するのは難しいように思います。前後左右・上下からの視点、時間軸への考察などの多変量解析的視点から、症状形成寄与率の大きい病因が判明するのでしょう。
しかし緊急事態下です。できることから手を打つのが先です。)
3、嗅覚:味覚異常に注意
COVID-19感染者の嗅覚と味覚障害の有病率は34%。2020年3月19~22日での受診者の PCR 検査で SARS-CoV-2 陽性と診断され、自宅待機可能な18歳以上の軽症患者202例(20~89歳、中央値は56歳、女性が52%)が対象。嗅覚あるいは味覚症状の発現時は初発症状のものが24例(11.9%)、その他症状と同時発現が46例(22.8%)、その他の症状の後に発現したものが54例(26.7)。嗅覚あるいは味覚異常が唯一の症状だったものは6例(3.0%)。嗅覚あるいは味覚異常は、女性の頻度が高かった(女性の72.4%、男性の55.7%)。
4、新型コロナウイルスへの免疫は持続しない可能性も・・・。
「集団免疫によるパンデミック終息論」は、新型コロナウイルス感染後に獲得される免疫が持続し再感染は起こらないという期待を前提としている。本研究では一般的な風邪症状は1年以内で普通にみられること、そして免疫が持続する期間はさほど長くないことを示した。
(今後、流行の波が繰り返される可能性が示されています。十分な手指消毒・環境消毒の継続と、対物・対人への直接・間接接触を避け続けることが必要なようです。確実な予防ワクチン、特効薬がまだ無い以上、それしかありません。また、それだけやっていれば大丈夫とも言えます。脚下照顧で、価値観や従来の生活スタイルを再点検する時期かもしれません。)
あとがき
地球上に生命が誕生して以来、一度も途切れること無く受け継がれてきた遺伝子の結果として、いま、この私たちの身体があります。わたしたち、全ての人は皆、遺伝子年齢では38億歳です。この想像を絶する長い年月によってつくられた精緻な身心を、無条件に、私たちは与えられています。尊い事です。
只、感謝する以外にありません。
平成17年、JR福知山線尼崎での脱線転覆事故で高次脳機能障害のため5カ月間の意識不明から奇跡的に回復された方がいます。闘病中で上手に話せない口から出た言葉に次のようなものがあります。
「生きていることが芸術やわ」
”生きていくことが芸術やわ。命あることが芸術。生きて何かをすることが芸術なんやなくて。生きたくても生きられない人もいるんやから、生きてるだけで芸術や”
”あたりまえのことは、あたりまえやないんや。なんで息ができるん・・・
でも何かわからんけど、いだいなもの、かなわないもの・・・”
”鼻で息ができることは、あたりまえのことやない。忘れるなあ、人間は。”
*はじめにも触れましたが、地球上に生命が誕生したのは38億年前です。ところで、遺伝子は一度途切れたら、そのあとの命は存在しません。ですから、今、わたしたちがここにある、という事は、38億年前の生命の誕生から、ただの一度も遺伝子が途切れた事が無い事を証明しています。
私達の体は38億年間続いている遺伝子によって動いています。
わたしたちは皆、38億歳なのです。
気の遠くなる年月を生き抜いてきた人間です。
Bon courage!(勇気を持って!)