おぶせの里だより

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新型コロナウイルス感染症Q&A 第二弾(2/2)

Qもっと早く感染対策は出来なかったのでしょうか?

A; 確かに対策が後手に回った感は否めない。2003年のSARSウイルスや2009年の新型ウイルスが流行した際は、『このウイルスはただものではない』という危機感から国をあげての対応となり、極めて厳格な防止策が立てられ、被害は最小限で済んだ。今回、新型ウイルスの怖さを考えれば春節で来日する人の選別、集団の集まりの自粛、あるいは入国者の厳格な水際対策、早目の非常事態宣言等を先手先手で打ち出せなかったか、厳しい指摘がなされている。ともあれ指摘よりも、この前代未聞の恐るべきウイルスに立ち向かう為に官民一体で、あらゆる事態を想定して対応していくしかない。尚、この機会に、アメリカのCDC(疾病対策センター) の様な緊急時に統括指揮権のある専門家集団の機関設置が強く望まれる。(尤も今回、CDC も対応の遅れはあったが)

 

Q: では個々人はどの様な点に注意したら良いのでしょうか?

A: 以下ポイントを挙げてみる。

  1. この期間、人同士の接触制限が重要であることはいうまでもないが、経済的疲弊をどうカバーしていくか両面政策が求められるのは先述した通りである。
  2. 感染ハイリスク場所として病院がある。自分はもしかしてコロナ?と慌てて病院に駆け込んで、実は風邪だったのにコロナウイルスに感染もありうる。 欧米や中国の報告では病院で感染した人が極めて多かった。
  3. 怪しいと思ったら、まずは指定の相談窓口に電話して指示を仰ぐこと。感染防御の整わない一般病院で安易に対応がなされれば感染リスクは高くなる。
  4. この感染症は対症療法が基本ゆえ、PCR検査は治療には直接結びつかないが感染の有無を知るには最善の方法、しかし偽陰性が 1~2 割あるらしい。最近は感染リスクの少ない唾液での検査も取り入れられている。
  5. 抗体検査は、過去の感染歴を知る法で疫学的意味合いが強い(IgM 抗体は感染初期、IgG 抗体は後期)、抗原検査は精度は低いが短時間で結果が出るが陰性の場合はPCR検査が必要で、両者ともPCR の補完的手法となる。
  6. 密閉した空間に人が密に一定時間集まる場所、例えばライブハウス・カラオケ・イベント会場・スポーツジム・夜の歓楽街・満員電車は要注意との警告が出されている。尚、特に密閉した場所での換気は重要である。
  7. 手洗いは個人がすべき最も大切な手技と思われる。外出から帰った時や人と接触後など、石鹸と流水で約 30 秒間、手の隅々までしつこく洗い、アルコール消毒を加えるとなお良いとされている。(100万個のウイルスが100個ウイルスに減ったという実験報告もある)
  8. うがいの他、水分をこまめにとり喉のウイルスを胃に流し込むことも一法(胃酸はウイルスの働きを不活化する働きがあるらしい)だが、便にウイルスが排出する恐れもあり、トイレ後の手洗いや消毒は大切である。
  9. 目・鼻・口の粘膜からウイルスが感染するゆえ、顔は絶対手でこすらない
  10. マスクは完全にはウイルスを防御出来ないが、かなりの予防にはなる。ただマスクの表面を触ったり、紐の部分でなく表面を持って外したり、外したマスクを不用意に置いたりすれば却ってリスクは高まり、注意が必要である。又、防御力を高めるため、マスクの内側にガーゼを挟むことも有効である。
  11. 他に十分な睡眠、バランスの良い食事、混雑のない空間での適度の運動、散歩などは免疫力を高める為、推奨されている。
  12. 介護施設や高齢者施設がとる対策として、ⅰ)面会者の制限 ⅱ)居住者の不要不急の外出制限 ⅲ)病院受診時の慎重な対応 ⅳ)外部からくる業者等の検温や手の消毒(感冒症状や微熱等があれば控えて頂く) ⅴ)スタッフの検温や体調チェック ⅵ)手洗い・アルコール消毒・マスク着用・うがいなど、当分の間厳しい防御策が必要で、居住者・家族の全面協力が求められる。ともあれ、施設内で一人でも新型コロナ感染者が出れば、館内に蔓延し、パニック状態になることはこれまでの例から明らかで、いくら警戒してもし過ぎることはない。(尚、感染者が出ていなければ、施設内での接触は、統一した取り決めがなされれば、過剰に神経質にならずとも良いと思われる。問題は感染蔓延地域からのウイルス侵入であり、特にスタッフは要注意である)。
  13. 感染蔓延地域から県をまたぐ不要不急の移動は極力制限すべきで、やむを得ず見えた方は一定期間一か所にとどまった上で行動することが望ましい。
  14. 今後、第二波・第三波を防ぐ意味でも、海外からの入国者に対する国の厳格な水際対策が最優先事項である(3~4月の我が国の感染蔓延は帰国者の水際対策がずさんだったことに起因していると云われている)
  15. 現在ワクチンや特効薬の開発は時間がかかりそうだが、既存薬であるアビガン(抗インフルエンザ薬で感染初期投与)やレムデシベル(抗エボラ出血熱薬で重症者へ)、オルベスコ(喘息吸入薬)等は病状改善に期待が持てそうな薬剤として検証中だが、副作用の問題もあり、慎重さが求められている。


Q今が山場と、繰り返し云われてきましたが、一体いつ治まるのでしょう

A; パンデミック状態からみて、完全な鎮静化には年単位が必要と思われる。もしこの感染が皆の努力で小さな山で済めば、ニ波・三波はあっても徐々に収束する可能性はあるが、それでも約1年間は油断出来ない状態は続くと思われる。
 処でワクチンや特効薬の開発は時間がかかりそうだが、2003年のSARSでは晩秋から冬場に爆発したが、梅雨時から夏の高温多湿期に徐々に治まっており、このウイルスも SARS の親戚と云われており、高温多湿に弱いかもしれず、そこに期待したいが、その前に感染爆発を抑えておくことが必須条件となる。ともあれ第一波は乗り越えつつあるが、第二波・第三波は避けられそうになく、小さな山で済む様努力すべきだが、特に経済問題感染という二律背反的課題をどう乗り越えるか、共に知恵を出し合って、総力戦で臨むしかない。

Q今回の新型コロナ騒動で様々な社会的問題が顕在化してきましたが、今後世界はどこに向かうと思いますか。

A; それはどんな専門家にも答えられない問である。敢えて云うなら、今後これまで当たり前と思われていた価値観が問い直され、新たな転換期を迎えることになるかもしれないし、何も変わらない旧態依然状態が続くかもしれない。ともあれこの大災害を乗り越えプラスに変えていけるか、マイナスに向かうかは後代の歴史が証明するでしょう。


*尚、新型ウイルスは変幻自在の動きをしますので上記で述べた内容が変わりうることは十分あり得ますし、誤った見解もあると思われますので、その点はご容赦下さい。