おぶせの里だより

医療関係者が自身の経験談や体験談、趣味に関する小話をおぶせの里からお届けします。

スポーツ障害相談会

 私が勤務している地域では、幼・保育園から小・中学校までの一貫教育として「身体づくり事業」という活動が行われています。この活動は、子どもたちの発育発達に応じた体力向上プログラムを作成し、機能性の高い身体の使い方と運動習慣の獲得を目的としたものです。理学療法士アスレティックトレーナーが中心となり、定期的に子どもたちと交流しながら運動指導を行っています。

 私は現在、その事業の一画である「スポーツ障害相談会」という活動を担当しており、中学校を週1回程度訪問しています。成長期にあたる中学生の身体は成熟した大人になる準備段階であり、決して大人のミニチュア版ではありません。中学生は中学生であるがゆえの身体的特徴があり、スポーツによる身体の不調・不安を抱えている生徒さんが少なくありません。相談会ではそのような生徒さんに対して個別に対応し、問題解決に取り組んでいます。

成長期スポーツ障害の特徴

①骨が弱い
 外傷(転倒など1回の大きな力による組織の損傷)だけではなく、長期的に繰り返されるメカニカルストレスによる障害(疲労骨折や軟骨損傷)が発症しやすいのが特徴です。

自然治癒力が高い
 これは良い特徴として捉える事も出来ますが、障害の状態によっては早期に適切な対応が求められる事を意味します。損傷や炎症を繰り返すような組織は、結果的に成長・機能障害を引き起こしてしまう事があります。

③骨端線の存在
 成長期の骨には、骨の生産工場の役割である成長軟骨(骨端線)が存在します。軟骨ですので構造的に弱いです。スポーツによる負荷で障害を受けやすいことに加え、状態によっては骨成長異常を引き起こしてしまう事があります。

筋肉の柔軟性低下
 成長期は身長が急激に伸びます。言い換えれば骨が急激に伸びます。しかし、その骨と骨をつないでいる筋肉は成長が追いつかず、常に骨に引っ張られているイメージとなります。すると筋肉は相対的に短縮している状態となり、柔軟性が低下していきます。この筋肉の柔軟性低下は、様々な障害の発生率を高めることが分かっています。

 上記のような特徴を踏まえ、私たちはスポーツ障害相談会の目的・役割を以下のように位置づけています。

①スポーツ障害の予防と早期発見
 それほど強い痛みではない、常に痛いわけではない、などといった症状から病院へ行く程ではないと判断してしまうケースがたくさんあります。そのような生徒さんに積極的に声をかけ、相談会へ誘導します。初期症状のうちに対応出来れば、重篤化を防げる可能性は非常に高くなると考えられます。

②コンディショニングの基本であるストレッチング指導
 成長期の身体的特徴から筋肉の柔軟性が低下し、様々な問題を引き起こすことは前述した通りです。身体の不調の有無に限らずですが、スポーツ選手にとってストレッチングによる身体のケアは必須です。しかし、そのストレッチングを正しく指導できる環境がなかなかありません。私たち専門家がその重要性を伝え、正しく実施できるよう指導しています。

医療機関誘導による早期診断
 相談会だけでは身体チェックに限界があります。何か身体の器質的異常を疑う場合は、医療機関への受診を検討してもらいます。

 これまで延べ100名を超える相談を受け、その多くの生徒さん達にストレッチング指導を行ってきました。学校の先生方や部活動指導者の方々の協力も得ながら、少しずつですがストレッチングの意識、習慣が学校全体で広がってきています。そして実際に相談会を利用してくれた生徒さん達も、ストレッチング習慣によって症状を改善できているという結果も伴っています。自身の努力で得られた身体の変化、この経験は是非大切にしてもらいたいです。そして限られた学生生活の中で、思う存分スポーツにも打ち込んでもらいたいと思っております。

 まだまだ小規模であり試行錯誤しながらの活動ではありますが、地域における各分野の専門家が連携を高めながら、子どもたちの発育発達、地域スポーツ活性化の一助となれば幸いです。

「ソロモンの指輪」(コンラート・ローレンツの動物行動学入門)②

5.コクマルガラスを育てて学んだこと(生後の刷り込み現象)

 小さい時から育てたチョックという名のコクマルガラスは、人間を親と思い込み、自分を人間と勘違いしています。求愛行動も愛情表現も人間(私)に行います。つまり、この他人への求愛行動は遺伝子的先天的に決まっているのではなく、各個体の幼少期の刷り込み経験によって決定されるのです。
 知的レベルの高いコクマルガラスの集団は、互いに一羽一羽を認識して各順位が決まります。最上位順位のボスは弱い順位のものに友好的で、いじめられていると弱いものに味方し組織を保とうとします。例えば、順位下位の雌が自分の巣穴を守ろうと、「ツイック、ツイック」と儀式声をがなり立てて上位の雌と争っているとき、ボスは下位の方の味方をしてその権利を守ってあげます。また敵が近づいてきて「ユップ、ユップ」と一羽ががなり立てると、連鎖反応を起こして(儀式的ユップ反応)大合唱を起こし、直接個々が体験しなくてもこれが自分たちの敵だと学習していきます。例としてカササギが雛を狙ってコクマルガラス集団に侵入したとき、侵入したカササギを1羽が見つけるとユップ反応の大合唱で追い払ってしまいます。
 また、コクマルガラスは鳴き声を使い分けて、集団を統率します(言葉の使い分け)。例えば「キャー」は一緒に遠くへ飛ぼう、「キュウ」は一緒に家へ帰ろうといったような使い分けがあります。ローレンツが飼っていたコクマルガラスが集団脱走したときには、ロートゲルプという老練なコクマルガラスが鳴き声の使い分けによって帰巣させました。具体的には「キャー」と叫んで若い仲間を他の集団から分離し拾い出し、その後「キュー」と鳴いて一緒に巣へ戻ってきたのです。

6.ソロモンの指輪を使わずに動物と会話する

 動物は人間のような会話ではなく、感覚器官、動作で反応します。しかも人間よりはるかに研ぎ澄まされた感覚で人間(主人)の心を読み取り(読唇術)、行動に移ります。例として、主人の所に嫌な客が来た時、シェパードのティトーは、主人が客に対して心理的に嫌な感情を持ったと読み取り、お客の尻を噛みます。
 賢いウマや犬が大衆の前で、計算問題を正解できるのも、主人の非常に微妙な表情変化を見ながら解答ししているからなのです。
 インコが客が帰りそうになった時に「じゃあまたね」とタイミングよく発するのも、かすかな人間のそぶりを見逃さずに察知するからです。心理的発達程度が高いインコ類やカラス類は、人間の言葉をまねて"しゃべり"ます。しかもある特定の音をこの鳥類の体験に結び付けることもできます。ボウシインコのパパガロが煙突掃除人に向かって叫ぶという例があります。パパガロは嫌いな煙突掃除人を目ざとく見つけると、その上を旋回しながら「煙突掃除人が来ましたよ」と叫び続けます。これは人間のようにある目的を達成させようとする"おしゃべり"とは違って、言葉の意味とは関係なくこの言葉自体に嫌な体験が結び付いていたからなのです。

7.幼年期の刷り込み現象

 鳥類は、孵化直後に刷り込み現象が起きて一生の親を決定します。ハイイロガンのマルティアの例があります。卵から孵化した雛のマルティアが最初に目にした人間(著者ローレンツ)を一生の親と認識しました。マルティアは孵化直後、最初に聞いた筆者の話すマガモ語で人間(筆者)を親と認識したのです。

8.動物は何を飼ったらよいのか

 人間は飼う動物に何を求めるのかを考えるべきです。一緒に暮らしていけない動物は飼うべきではありません。動物に苦痛を与えてはいけないのです。
 例えば、心理的発達の低いナイチンゲール、ムシクイ、ゴールデンハムスターは、狭い檻に入れても精神的に苦しまないため、檻でも飼えます。しかし、心理的に高等なサル、マングース、インコ、カラス類は、一日一回檻から出して自由にしてやらなければなりません。でないと彼らは心理的に潰れてしまうのです。逆に彼らは心理的に高等なため、自由にしても必ず檻に帰ってきてくれます。

9.人間と犬はどのように結びついたのか

 イヌは、生後極めて早い6か月から1.5年の「感受期」にたった一人の人間を主人として一生の忠誠を誓います。これがジャッカルやオオカミが犬として人間に家畜化された理由です。
 ジャッカル系の犬(耳が垂れている)は、非常になつっこく、可愛がってくれる人なら誰にでも尻尾を振ります。これに対し、オオカミ系の犬(耳が尖っている)は個と個のつながりが非常に強く、ただ一人のご主人様だけに仕え、他人には振り向きさえしません。

10.動物の心理的抑止力

 高度な武器をもった動物(オオカミ等)は、高度な心理をもち、群れの中で社会的抑制力を働かせ、降伏者が儀式的服従の姿勢をとると、それ以上は攻撃しません。一方、ハトのような強力な武器をもたない動物は、抑制力が働かず、服従したものを徹底的に殺戮してしまいます。
 人間はもともと弱い動物で、太古はハトのように敵が服従しても徹底的に殺戮しました。現代では知識の蓄積で高度な武器をもつようになり、宗教的道徳思想も発展し、抑制力が働く心理状態が育ちました(オオカミ化)。しかし、いつ原子のハト状態に戻って歯止めがきかなくなり、破綻が起きるかわからない危うさをホモ・サピエンスはもっています。心理的抑制をもてるかどうかが人間の知的レベルの高さを図る物差しなのです。

「ソロモンの指輪」(コンラート・ローレンツの動物行動学入門)①

 今日、病院も日本政府も経験したことのないコロナ禍によって、右往左往の手探り状態が続いています。明確な道標が無い状態で生き抜く術は、動物としてのホモサピエンスに備わった本能、遺伝子情報が本領発揮してこそだと思います。

 普段は文明という着物で身を包んでいても、一旦未曽有の危機が迫れば、隠れていた人間の動物本来の姿がむき出しになり、生存競争を生き抜こうとします。その時、やはり人間も動物の一員なのだと実感させられます。

 動物行動学の祖コンラート・ローレンツは動物行動学を通して、ホモ・サピエンスを鳥瞰しています。言語は人間種だけの特権ではなく、動物にも言葉(共通語)があります。言葉を通して固有種としての一体感、種の保存(危険からの回避)を保つことができるのです。

 今では古典となりましたが、オーストリア出身で動物行動学を樹立し、ノーベル賞を受賞したコンラート・ローレンツの「ソロモンの指輪」をご紹介します。

~「ソロモンの指輪」コンラート・ローレンツ著~

 紀元前千年頃、今の中東にイスラエル王国を確立したダビデ王の息子ソロモンは賢い王で、魔法の指輪(ソロモンの指輪)をはめて動物と会話ができたと言われていました。しかし、ローレンツはそんな特殊な指輪をはめなくとも、動物と会話ができますよと提唱します。ローレンツは動物の行動、発生する声などをありのままに観察することで、その心理、会話内容が普通の人にも理解でき、意思疎通ができる事を証明しました。

1.動物への接し方、観察の仕方

 動物には愛情をもって、決して拘束せず、ありのままに観察することが大切です。例えば、研究でズキンオマキザルやハイイロガン「実験遊戯」をさせてみます。家中はめちゃくちゃになりますが、知能の高い彼らは人間があっと驚く高度で計画的ないたずらをします。知能が高いのは決してホモ・サピエンスだけの特権ではないのです。

2、アクアリウム(水槽)での観察

 水草を少々いれて、ありのままに放置しておくと、いずれ自然な形での動植物の生物共同体が形成されます。先天的に同じ条件でスタートしても、その後、水槽が置かれた後天的環境(光量)により、それぞれの水槽の水草の成長が変化します。光量が多くすれば水草が生い茂り過ぎてしまい、光量が少なければ水草が消失してしまいます。適度な光量にすることで、水草が適度に繁殖し、小生物が適度に共存できる環境ができます。

3、動物の知的レベルの高さの測定

 水槽の中のゲンゴロウの幼虫は動くものに何でも噛みつきます。共食いもし、抑制機能がありません(知的レベルが低い)。それに対してヤゴは、動くものだけでなく、動かないものも餌にします。つまり、動かないものも餌と認識できる個体識別能力があり、また仲間を識別して共食いもしないということです。このような例からもヤゴがゲンゴロウの幼虫より知的レベルが高いといえるでしょう。これは人間集団にも当てはまります。

4、求愛に関して

 魚の闘争ダンス(攻撃)や求愛ダンス(受け入れ)は儀式化されています。
 トウギョ心理的レベルがやや低く、儀式化されたダンスだけでは相手が雄か雌か判別できません。その後の相手の反応や動きを見て、雄か雌かを判別し、闘争か求愛に進みます。トウギョは、儀式化された求愛の後に心理的レベルが上昇し、水中受精後は心理的レベルの高い、卵の守り方をします。水中に散乱された卵を一個一個識別して拾い上げ、水上の泡の巣へ押し込んでいくのです。
 一方、心理的レベルが高い闘争ダンスの例として、心理的レベルの高いトゲウオは、水槽の片隅に自分の巣を構えると、巣からの距離に反比例して闘争心(勇気)が弱くなり、逆に巣に近いほど闘争心が増します。この結果、2匹のトウギョの間には境界線ができ、それぞれ安住の領域に住み分けられます。つまり、この儀式化された境界線決めの例からは、相手を追いかけ過ぎると勇気が失われて引き返し、自分の勇気が保てる程よい距離の縄張りに落ち着くという事がわかります。
 さらに、宝石魚はトウギョよりさらに知的レベルが高く、妻、夫をそれぞれ単独個体として互いを認識し、数年間に渡って一夫多妻制で生活します。つまり、識別能力、己の自己主張の範囲をわきまえる事が知的レベルの高さなのです。

                                (つづく)

たとえコロナ禍でも、障害を持ったお子さんへの医療福祉施設の理念

 現在の日本はコロナ禍に見舞われ、人々の生活がひどく脅かされています。
 過去にも、長野県では千曲川氾濫、白馬大地震御嶽山浅間山噴火などの災害によって、多くの被害がもたらされました。国や県は災害復興に予算を取られ、真っ先に一番弱い子供たちの福祉予算が削られてしまいがちです。そのような中でも我々は障害を持ったお子様を守っていかなければなりません。

~医療と福祉はどのように関わっていくのか~

 WHOは保険を通して、人々が健康に暮らせることを提唱しています。その為には、ケアを受ける人々が身体的、精神的(主に医療的ケア)、そして社会的(主に福祉サービス)にすべて満足感を得られるようにしなければなりません。
 医療的ケアは物理的な身体的障害に対し、資格を持った者(医師、看護師、理学療法士)が、科学的な思考下でアプローチし治療に当たる行為です。
 福祉は、社会福祉士介護福祉士等の専門性の高い知識を必要とすることもありますが、資格という制限がなくとも、施設利用者が実生活で再び社会的に受け入れられ、幸福な社会的福祉を享受できるように、相談業務、介護やボランティア等を通して携われます。
 いくら良い医療を施しても、その人が社会的に受け入れられなければ、十分な満足感は得られず、その人に対する”保険”は未完成です。福祉が適切に行われることで最終的に完成するのです。

~障害を持ったお子さんの将来にわたる命と QOL(人生の質) にどう向き合うか~

 重症心身障害者の平均寿命は、一般的に多くの合併症を抱えている為に短いと言われています。大体20歳ころより、合併症症状が徐々に顕在化しやすいと思われています。それに伴い、身体的、精神的、社会的に次第に尻すぼみになりがちです。
 短い寿命の方が多い中、人として充実した人生(身体的、精神的、社会的に)を送れるようにサポートするのが、医療福祉施設の使命です。
 しかしながら、人生とは残酷なものです。
 最初のうちは、親御さんはいろいろな希望を持たれることもあるでしょう。しかし、障害を持ったお子さんと人生を共に苦楽を共有しながら生きていく中で、気持ちのゆらぎは必ず生じます。その人生のプロセスを適切にサポートするのが福祉の重要な役目です。たとえその親子がどのような人生のプロセスをたどろうとも、その状況に応じた身体的、精神的、社会的に最大限健康でいられるサービスを提供しなければなりません。


~経営基盤について~

 そうはいっても、上記の理念を実現するためには、経営基盤が健在である必要があります。資金があってこそ理念は実現できるのであって、無ければ机上の空論に終わってしまいます。
 当施設の経営基盤は、本体部分の入所児童数の確保です。
 short stay のお子さんの受け入れは、人工呼吸器装着などより重症度が高くなっていますが、高度なトレーニングを積んだ看護師、生活介護スタッフ、リハビリテーションスタッフが受け入れています。
 医師側も急変時、最大限のサポートをお願いしています。急変時は人海戦術になるので、当直医だけに任せず、連絡のつく医師にも駆けつけてもらいます。
 一般小児、大人の外来診療についても、地域住民の方に良質な医療サービスの提供を目指しています。

~最後に~

 当医療福祉施設は、この地域でなくてはならないものとして、その存在価値を高めていきたいと思っております。お互いに持ちつ持たれつの信頼関係が生まれれば、当施設が困った時、(たとえば令和1年の千曲川氾濫時のように)地域の方がきっと手を差し伸べてくださいます。特に障害を持ったお子さんのご両親には、この施設だったら安心して預けられると思っていただけるよう、常に精進して参りたいと思っております。

冬期到来する”変異第3波新型コロナ禍”に対する社会福祉施設の対策

 日本でのコロナ禍感染変異状況は、1月に中国観光客により弱毒化コロナが持ち込まれ、多くの日本人が一応免疫獲得したと思われます。3月の変異強毒化ダイプリ事件を経て、現在第2波の変変異で感染力の強い弱毒化コロナの最中と思われます。第2波は収束の方向ですが、冬に南半球で蔓延している強毒化コロナが流入してくる可能性があります。
 RNAウイルスは集団感染の中で、1回/月の頻度で変異すると言われています。更なる変異したコロナウイルスがインフルエンザウイルスと共にこの冬やって来ることを想定しなければなりません。
 一般にある感染症が流行って集団免疫が獲得されると、免疫応答で中和抗体を介して他の感染症(例えばインフルエンザ)が抑えられる傾向があります。そういう意味では、インフルエンザのこの冬の流行は、ある程度抑えられるかもせれません。

   再変異第3波コロナ禍とインフルエンザ感染症は症状で区別できない。

 この冬、感冒症状の患者はすべてコロナ扱いとなります。
 肢体不自由社福祉施設内の入居者を守るため、院内にコロナウイルスも持ち込ませない事が原則です。
 その為には、外来患者で感冒症状の方は、院外の孤立感染症部屋で診察治療します。この部屋には、感染対策 Box を設置し、ビニールカーテンで仕切り、陰圧室でウイルス除去フィルターを通して外へ排気します。患者と直接接触を避け、Box からの長手袋操作で患者の簡易唾液コロナ抗体検査(約30分で判明)と鼻腔インフルエンザ抗原検査(約15分で判明)を施行します。
 コロナ陽性であれば、保健所に連絡してもらいその指示を仰ぐ。陰性でも、コロナ感染症の感染は否定できないので、その旨を患者に含みを持たせて説明する。インフルエンザ陽性であれば、抗インフルエンザ薬で対応。コロナとインフルエンザ同時感染であれば、抗インフルエンザ薬を投与して、同時に保健所の指示を仰ぐ。すべて陰性なら、感冒薬で対応。しかし、コロナ、インフルエンザともに否定はできないので、症状の変化に応じて、再受診もしくは保健所に相談してもらう。
 原則、感染症疑いの患者は感染部屋ですべて対応が終了するようにする。
 薬の受け渡しは患者は車に戻ってもらい、車の窓越しに説明お渡しする(院内にはコロナを持ち込ませない)。
 コロナ(+)の入所者には、ゾーイングされた隔離病棟にコロナ患者用ベット2台(ベットを覆う封印ビニールカバー、排気ウイルス除去フィルター等)整備する。ビデオカメラ、生体モニターで看護室で監視する。

           入所児童がコロナ感染であれば

 受け入れ施設が見つかるまで、当院で完全隔離しながら治療する(比較的症状が軽症の場合)。
 重心患者は医療的ケアが必要なので、看護師が病棟でケアし、濃厚接触者で PCR(-) 無症状患者は別棟の隔離観察ベットで生活介護福祉士が交代で対応する。

              通園・通所の場合

 御家族がコロナ感染で、利用者様が濃厚接触者の場合(1回目 PCR(-) は確認)、保健所から経過観察の依頼があれば、お引き受けする。
 濃厚接触者で PCR 陰性の受け入れ病室は、完全にゾーイングできる隔離病室が望ましい。そういう意味では、通園の観察室は、完全に他病棟とゾーイング可能なので、コロナ対策設備を整えてから経過観察用ベットとして使用する。この場合は、約7~10日は通所・通園は中止し、当該生活介護福祉職員は病棟配置となる。
 入所児重心者のコロナ疑いの患者は、医療的ケアが必要なので、使用部屋は院内の観察室を使用する。入院中 PCR 陽性となれば、再度保健所に相談する。
 一般外来大人の患者は、電話対応、薬の処方等も考慮する。
 リハは病棟中心で行い、外来受診のリハは中止する。

 今後の日本は、常に ”with CORONA” でいつどこででも感染が発症するものとして対応したい。

この冬到来する”変異第3波新型コロナ禍”と”インフルエンザワクチン接種”について

 今の変異第2波コロナ禍は日本では収束の方向性ですが、実は今期冬季にやって来る第3波変異コロナ禍が正念場です。
 現在、南半球は冬季で南米ブラジル、アフリカ、中東、インド等で新型コロナ感染症が猛威を振るっています。RNAコロナウイルスは変異し易く、流行地で容易に変異型になります。
 この秋~冬に南と北半球は逆転し、北半球は冬季となり、南半球の再変異コロナ禍がインフルエンザと共に襲来する季節となります。

 再変異第3波コロナ禍とインフルエンザ感染症は症状で区別できない。

この冬、感冒症状の患者はすべてコロナ扱いとなります。
 具体的には県にコロナ検査機関の登録をします。同時に県のコロナ対策補助金事業制度を利用し以下の整備をします。外に設置の感染対策Box を設置し、患者と直接接触を避け、Box からの長手袋操作で患者の簡易唾液コロナ抗原検査(薬15分で判明)を施行します。
 コロナ陽性であれば、保健所に連絡してもらいその指示を仰ぐ。陰性でもコロナ感染症の感染は否定できないので、その旨を患者に含みを持たせて説明する。
 インフルエンザ陽性であれば、抗インフルエンザ薬で対応。コロナとインフルエンザ同時感染であれば、抗インフルエンザ薬を投与して、同時に保健所の指示を仰ぐ。
 すべて陰性なら、感冒薬で対応。
 しかし、コロナ、インフルエンザともに否定はできないので、症状の変化に応じて再受診もしくは保健所に相談してもらう。
 原則、感染症疑いの患者は、感染部屋で対応が終了するように、LAN でノート型電子カルテを設置。薬の受け渡しは感染部屋か、できれば車の窓越しで説明しお渡しする。
 将来的には小児患者でも対応できるようにする。(院内にはコロナを持ち込ませない。)
 病棟にコロナ患者用ベット2台(ベットを覆う封印ビニールカバー、排気ウイルス除去フィルター等を設置する。)

 入所児童がコロナ感染であった場合

受け入れ施設が見つかるまで当院で完全隔離しながら治療する。(比較的症状が軽い場合)

 通園・通所の場合

ご家族がコロナ感染で、利用者様が濃厚接触の場合(1回目 PCR(-) は確認)保健所から経過観察の依頼があれば、お引き受けする。この場合は、約7~10日は、通所・通園は中止し、当該職員は病棟配属となる。
入院中 PCR 陽性となれば、再度保健所に相談する。一般外来は電話対応等も考慮する。

 このような状況下で、インフルエンザワクチンを接種し、少なくともインフルエンザには罹患しないようにすることが重要です

 インフルエンザウイルスについて

A,B,Cの3種類があります。

A症状が激しい、RNAウイルスで不安定。型の変更が起きやすく、ワクチンの当たりはずれは生じやすい。 鳥 - 人、人 - 人で感染し流行する。
B. 症状は比較的緩やか。型は安定し変異は少ない。お腹の風邪症状で下痢やお腹の痛みを訴える人がいる。 人 - 人で感染。
C. 1度は感染し、終生永久抗体を獲得する。4歳以下の小児に多い。症状は比較的軽症。

 今年のインフルエンザワクチンは4種です。

A. H1N1      シンガポール
  H3N2      香港型
B. 山形系     プーケット
    ビクトリア系  テキサス型

 ロット番号は製造年月日を表し、有効期限内のロット番号ワクチンを接種する。ワクチンロット番号は順次更新していく。

 今年のインフルエンザワクチン供給量は例年より8%増の 2,951 万本で量的には過不足はありません。
 インフルエンザワクチン接種後2週間後~4,5か月まで有効と言われていますが、ワクチンを早期に打つと R3 の3,4,5月をカバーできないので、2回目の接種も必要かもしれません。ワクチン供給量が R3 1月の時点で余剰があれば、2回目接種も考慮します。

 65歳以上の高齢者には、コロナウイルス感染症で引き続き起こるサイトカインストームが命取りとなります。この時は二次性の細菌性混合感染(市中肺炎で主に肺炎球菌)も悪化の原因となります。
 肺炎球菌ワクチンを先に私費でプレベナー 13(記憶細胞の Tcell 刺激)→その6か月後に公費負担のニューモバックスワクチン(抗体産生の Bcell 刺激)で永久免疫獲得をお勧めしています。

コロナ禍における苦悩、対策から見えた医師の在り方

 ある心療内科で、私とほぼ同じ年代に属する院長先生が新型コロナウイルス感染症に罹患して2か月以上が過ぎても回復に至らず、結局、閉院となりました。私も糖尿病・高血圧を持病として持つ身として、罹患した場合、閉院どころでは無く、寿命が尽きる可能性が大きい事は明らかです。しかし、このコロナ禍の中で医師は逃げる事は出来ません。日々、緊張します。

 新型コロナウイルス感染症への恐怖も関係して、4月,5月,6月の受診抑制には著しいものがありました。6月の統計では医療機関は平均 -30% の収入減でした。ニュースなどでも取り上げられていますが、医療機関への受診控えは甚だしいものがあります。
 テナント開業の診療所は、この様な状況が続けば撤退せざるを得なくなります。3月,4月と業績の低下は明らかでした。
 3密のメッカのような医療機関に行きたいと思う人がいないのは当然です。確かに待合室の3密発生を防止することは医療機関の環境管理として必要な事です。この事だけから見ると、受診抑制は患者さんと医療機関の双方にプラスに働きます。しかし医療機関は患者さんの受診があって初めて事業として成り立つものですから、受診抑制は経営的に大打撃です。

 今般、「オンライン診療」なるものが、特例として認められました。医師法では、無診療新規投薬は厳しく禁止されています。しかし、今回、厚生局からの通達では、「電話のみで、処方箋を発行、つまり投薬しても良い」との医師法違反行為が奨励された訳です。
 ところが、残念ながら、神経科・精神科の専門医診察による「通院精神療法」と、精神神経薬のオンライン処方だけは認められませんでした。「薬物中毒者に利用される」との理由からでした。
 内科・外科・整形外科などの近所の人が"恥ずかしく無く通院できる科"とは違い、精神科・心療内科への通院は、未だに周囲の人からの理解を得られないようです。従って"顔がわかる"ような近所への通院は、まだまだ抵抗があるようです。つまり、遠方へのオンライン処方は精神科・心療内科にこそ必要な事なのです。

  この状況下、何の対策も行わずにいることは、診療所の社会的役割と経済的基盤の破滅を座して待つ事を意味します。
 改めて、問題解決の常として、最も単純な事実から考えてみると、
①患者さんには治療が必要である
②主治医として、患者さんに必要と判断した治療は継続すべきである。
コロナウイルスに近づきたい人は何処にもいない。
これら三つを満たす対策が必要となります。

 また、ウイルスの感染は、①人から人へ、②固定環境から人へ、③空気、手に取る商品などの流動的な環境から人へ、の3つの面から考えられます。
 そうすると、患者さんと自分がこのウイルスにとりつかれないためには、
①環境の徹底した換気を行う⇨診療所では push-pull システム導入による室内空気の強制連続排気、新鮮な外気の強制連続取り込み、を開始しました。
②建物・乗り物などの設備に触れない。
③確実に手指消毒を行う。
 等を習慣として"完璧に"行い続けることが最低の要件となります。この3点は感染危険性から遠ざかるための必要条件でもあるとも言えます。しかし無症状の患者さんが少なくないわけですから、診療所に入ってこられた患者さん全員の体温測定をして、高温の場合に特別な対応を行っても十分条件にはなりません。

 このような状況から、通院を希望しない若しくは困難な患者さんからの往診依頼があれば積極的に対応する事を決めました。
 患者さんが不安などの為に来診困難であるのなら、こちらが行くまでです。自分が出来る限りの防護行動を怠らなければコロナウイルス感染は受けない筈と考えました。
 これらの方針の決定・実行後は、順調に外来患者さんは減少、待合室は安全・快適な環境となりましたが、往診回数、私の疲れ、帰宅後の潤滑油の量、ならびに減量に成功していた体重は順調に増加しました。 
 往診作戦を開始した当初は、しばしば帰宅は深夜の10時,11時を過ぎました。一度は0時を過ぎたこともあります。
 今のところは大きな経営基盤の揺るぎは生じていません。受診控えの為に大きな影響を受けそうだった経営状態も、積極的な往診で対応することにより、今のところは健全な状態を維持する事が出来ています。
 ただ、ときどき "どこまで続く泥濘ぞ、"との討匪行の歌詞が脳裏を掠めます。第2波が、第1波を上回る規模で襲来している今、当分この体制を続けなければなりません。

 しんどい中にも楽しみはあります。

 遠いところへの往診は、時間的・体力的にも確かに負担になります。しかし、特に田園地帯、山間部を通る往診は夫婦で小旅行を楽しんでいる様な気分にもなれます。
 新緑の鮮やかさに打たれるひと時は命のリフレッシュになります。
 長い旅の間には、時々の自然の呼び声に応える必要があります。それに応えた後、ほっとして見渡す周囲に山菜の気配を感じることがあります。そんな時には躊躇なく、ワクワクしながら山に分け入って行きます。妻と楽しいひとときを過ごすこともできました。正に往診逍遥の余得でした。

  往診を続けて行く中で、本当に色々な環境、お住まいから受診して下さっている事が初めて実感されました。そして、診察の場だけが重要なのでは無く、わざわざ診療所に通院するという行為に、寧ろ、より大きな気持ちが込められているのではないかという事も、漸く分かってきました。私達、特に医師はこのような患者さんたちのお気持ちに寄り添い、それぞれの一期一会の御命をいとおしみながら生きて行かれるのに手を添えて差し上げることが義務なのだと、恥ずかしい事ですが遅まきながら感じることができました。